ヴィーガンやマクロビオティックなどヘルシーな食生活を実践する人が陥りがちな「鉄欠乏症貧血」。「鉄欠乏症貧血にならないための食べ方」を、マクロビオティック歴15年で腸セラピストの ≪素果子|sugashi≫ 店主、半田葉子さんが解説します。
ヘルシーな食生活を送る人が陥りがちな「鉄分不足(鉄欠乏性貧血)」
最近は日本でも「vegan(ヴィーガン)」という言葉も定着し始めていますね。SNSが普及したおかげで今まで一部しか知ることのできなかった環境問題や畜肉の飼育方法、海外の最新の健康に関する論文などが簡単にシェアできる時代になり、さまざまな思いから野菜中心の食生活を選び実践している方も多いことでしょう。
そんなヘルシーな食生活を実践する人たちが陥りがちなのが「鉄欠乏症貧血」。その原因は「お肉を食べる量が少ない」からだけではありません。「鉄欠乏症貧血」にまつわる身体のメカニズムを一緒に考えていきましょう。
不調の原因は、隠れ貧血「鉄欠乏性貧血」ではありませんか?
鉄欠乏性貧血とは、血液が組織されている「赤血球・白血球・血小板・血漿(けっしょう)」のうち、赤血球の成分である「ヘモグロビン」を作るために必要な鉄分が不足することで起こる貧血のこと。通常、血液中の鉄が不足すると肝臓や脾臓・骨髄などに「貯蔵鉄」として予備の鉄分が蓄えられています。「鉄欠乏性貧血(隠れ貧血)」とはその貯蔵鉄が不足している状態のこと。以前は生理のある女性や妊婦に不足しがちと言われていた鉄分ですが、現代では菜食による栄養バランス、加工食品・清涼飲料水・スナック菓子などに使用される添加物の一種であるリン酸塩は鉄の吸収を阻害することなどにより、「鉄分」の重要性は高まってきています。

鉄欠乏性貧血は少しずつ進むため、ヘモグロビン濃度が基準値の半分近くまで減っても症状が無く気づかない事も多々。自覚症状がある時にはかなり進行してしまっている場合も少なくありません。また通常の血液検査では貯蔵鉄である「フェリチン値」を調べないので、ヘモグロビン値に異常がなく「鉄欠乏性貧血(隠れ貧血)」と診断されないことも多くあり、生理のある女性や妊婦の場合は貯蔵鉄が不足している場合、すぐに「自覚症状のない貧血」になってしまう恐れがあります。
朝が弱い、手足が冷える、立ちくらみ…慣れてしまってはいませんか?
以下の症状で思い当たることはありませんか。
・手足が冷えるのは冷え性だから
・朝は眠いもの
・立ちくらみはみんななるもの
・若白髪は遺伝だから仕方がない
・階段をあがると誰だって息切れや動機はするもの
・どこかにぶつけたらアザはできるもの
・誰だってイライラしたりだるい日がある
これらの症状に慣れてしまっている方も多いかもしれませんが、残念ながらこれらは「鉄欠乏性貧血」である可能性が高く改善の余地がある項目です。他にも鉄欠乏性貧血で起こることとして、ストレスや寝不足、氷を食べたい衝動に駆られる「氷食症」を始め、土や髪の毛といった栄養のないものを口に入れたくなる「異食症」という症状として表れることもあるとも言われています。 また、鉄分が欠乏すると「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群/下肢静止不能症候群)という、布団の中に入ったり映画館や飛行機など、じっとしていると足に不快感が起こり動かしたくなるという症状として表れることもあります。
貧血の症状は誰かと比べることが難しく自覚症状がない人も多いため、貧血が治ると「こんなにも心身の状態が楽なものなんだ!」と感じる方も多いようです。「健康なのに子が授からない」という方も実は「鉄欠乏性貧血(隠れ貧血)」が原因かもしれません。
ヘルシーに見えても実は鉄分の吸収を妨げるものが多い?【鉄分吸収を妨げる栄養素4選】
レバーや赤身の魚、小松菜やひじき、豆類(納豆)、胡麻、プルーン…、「鉄分豊富」な食品は耳にすることも多いかと思います。今回は、菜食を実践している人が陥りがちな【「身体に良い」と思っている食べ物が偏りや過剰摂取によりマイナスに働いてしまう】栄養素に絞ってお伝えします。
【タンニン】コーヒーやお茶(緑茶・紅茶・ウーロン茶など)
白砂糖や乳製品を控え、コーヒーやお茶を常飲している方も多いのではないでしょうか。タンニンは「抗酸化作用」というプラスの面がある一方で「鉄分の吸収を阻害」するというマイナスな面があります。コーヒーやお茶というと「カフェイン」を意識してしまいがちですが、鉄分の吸収には「タンニン」が深く関係しています。また、ワインや柿もタンニンの含有量の多い食品です。

デカフェにもタンニンは含まれています。焙煎によりタンニンは少なくなりますので「深煎り」がおすすめです。
【フィチン酸】玄米・全粒粉などの穀物の外皮
玄米は「完全食」。玄米は水に浸ければ芽が出てくるほど生命力も強く、白米に比べ栄養面も優れています。しかし、玄米や全粒粉など穀物の外皮は「鉄分の吸収を阻害」するという面も。

玄米が苦手な方にもおすすめなのが「三分づき(三分精米)」。玄米の栄養素を残しつつフィチン酸を玄米よりも取り除くことができます。ホームベーカリーで全粒粉パンを作っている場合は、全粒粉の量を意識してみましょう。
【食物繊維】おから、大豆、穀物の外皮、海藻類
整腸作用にも必須な食物繊維。海藻類は「ミネラル」という面ではとても大切な栄養素が豊富にある食べ物です。ただ、こちらも「鉄分の吸収を阻害」するという面があります。

食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の二種類があります。「不溶性食物繊維」は特に鉄分吸収を阻害してしまいますので、食物繊維を摂取する場合は「水溶性食物繊維」を意識してみましょう。※食物繊維は大切な栄養素です。不足しないように気を付けましょう。
【シュウ酸】ほうれん草・さつまいも・アーモンド・未熟なバナナ・チョコ・ コーヒー・緑茶(玉露・抹茶)
さつまいもも「完全食」、おやつの代わりにさつまいもやアーモンド、バナナやカカオ多めのチョコレート…という方も多いのではないでしょうか。これらはどれも「身体に良い食べもの」というイメージが強いですよね。ただしシュウ酸も「鉄分の吸収」という点では注意が必要です。

鉄分はビタミンCや「酸」と一緒に摂ると吸収率が高まります。また、ビタミンCは水に溶けやすい性質があります。ビタミンCの多いさつまいもは茹でるより蒸す、バナナのスムージーにレモンを少し加えてみる、ほうれん草の梅海苔和えなど…、調理に「酸」を加えてみましょう。
10代~40代の女性は生理があるので鉄欠乏性貧血になりやすいですが、閉経後の女性や生理のない男性は過剰になる場合もあります。鉄分過剰になると便秘や胃腸障害、亜鉛の吸収阻害や坂ストレスのリスクが増加したり、男性は特に糖尿病になるリスクが増える場合があります。ビタミンCなどは過剰に摂取すると尿などで体外に排出されますが、鉄分は体内に蓄積されやすいので注意が必要です。健康診断でフェリチン値をチェックしたり、献血をするのも良いかもしれませんね。
私たちはどうしても「これは良い」「あれは悪い」と判断しがちです。食べ物も物事もある人にとっては「良い作用」もあれば、ある人にとっては「良くない作用」もあります。ご自身の心身と対話しながら、バランスの良い状態を探ってみてくださいね。